40代でSF界の長老であった
星新一の評伝である。
なまぐさいことは
育ちがいい星新一にもある。
北杜夫にもあった。
異母兄弟もいる。
この異母兄についても
星新一は取材しているが
詳しいことは
わからなかったようである。
関係者の口が重い。
また、親の会社を引きついで
ひじょうに苦労して
そして手放している。
親の晩年について書こうとしたが
果たせなかった。
星新一の70年代には
大きなできごとがみっつあって
ひとつは父の星一のことについて
書かれた書籍が出て
否定的な内容で衝撃を受けたようだった。
ふたつめはSF小説の同人誌の
『宇宙塵』創刊20周年であった。
売れっ子になってからも
主催者の柴野拓美氏を訪ねている。
こういところは律儀というか義理堅い
方なのだろう。
(この有名な同人誌の全巻揃いを
早稲田の古書店でみつけたことがあるが
今おもえば買っておけばよかったとおもう。)
みっつめは新井素子の発掘である。
読むと異様な感じがする。
反対している。
80年代になって疲れが出てきたと思う。
60歳過ぎてから体調が悪化したようだった。
創作の疲れと喫煙と飲酒の影響だろう。
すでに癌におかされていたか、
貧血、睡眠薬ののみすぎも
あったようだ。
転倒したことも幾度かあったようだ。
この評伝の著者が
ショートショート集『ボッコちゃん』
の最後に収録されている
「最後の地球人」について
書いている。
よんでぐいぐい引き込まれていったと
書いている。
わたしも読み返してみたら
ほんとうにそのような内容だった。
結末はなにかを暗示している。
昔、品川区内を歩いていたら
「星薬科大学ってどこですか?」
と若い男女に聞かれたことがあった。
大学受験生であったのだろう。
そういえば
星薬科大学には
星一の胸像があったなと思った。
なぜそれを覚えていたかも
忘れてしまった。
一度いったことがあるのだろう。
星一に関係があったのだった。
ささっと案内した記憶がある。
星新一は作品を書くときに注意していたことが3つあって
1つはベッドシーンや殺人事件をかかない、
2つめは時事風俗を描かない、
3つめは前衛的手法を用いない
というものであった。
そのような作品が多い。
時代物もあるが
1950年代の作品で
今読んでも通じるものが多いのは
時事風俗を排除している
そのせいであろう。
いっきにショートショートの
1000編読み返してみたいものである。

- 作者:最相 葉月
- 発売日: 2010/03/29
- メディア: 文庫

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- 発売日: 2010/03/29
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