SNOWLOGの日記

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文壇風刺小説『大いなる助走』を読む。

 

 作家・筒井康隆氏の

痛快な作品が『大いなる助走』である。

2000年代に新装版が出ていた。

 私は単行本で読んだ記憶がある。

全集に収録されたのも読んだことがある。

文庫本も買って読んだことがある。

 三~四回ほど読んでいると思う。

あらすじは

地方の文芸同人誌に参加している会社員の

作品が直廾賞という文学賞の候補になる。

 そこから金に女に自分自身にと駆け引きがはじまり、

またドタバタがはじまるのだた。

最終的には落選して

直廾賞の選考委員が次々に殺されるという

展開になっている。


 いろいろモデルがある小説である。

雑誌『文学海』は『文学界』で、雑誌『群盲』は『群像』である。

出版社の初潮社はいうまでもないが新潮社である。

直廾賞は直木賞がモデルである。

 ひとくせもふたくせもある直廾賞の選考委員にもモデルがいる。

不品行の娘がいる鰊口冗太郎は川口松太郎がモデルである、

LGBTの雑上掛三次は村上元三柴田錬三郎の合成だろう。

女性好きの風俗小説家の坂氏疲労太は源氏鶏太で、

ミステリ作家の膳上線引は松本清張水上勉の合成だろう。

歴史小説家の海牛綿大鑑は海音寺潮五郎司馬遼太郎の合成。

政府関係の仕事もしている明日滝毒作は今日出海と滝井孝作の合成だろう。

とまあ

おそらくは筒井氏が候補になった当時の

直木賞の選考委員をモデルにしている。


 中央の文壇を風刺しているが

地方の同人誌をも風刺している。

  地方の同人誌(といっても東京にあったが)に参加していた

作家志望の人を知っていたが

この『大いなる助走』の同人誌の世界だった。

 作家志望のは仕事をしていなかったが

作品を出版社に送っていたが

まったく採用されなかった。

 同人誌を買えというので買って

その人の作品を読んでみたが

箸にも棒にもかからないモノだった。

 当然、商業誌にも掲載されるはずもない。

根拠もなく自分に才能があるとおもいこんでいた

その人は三十過ぎても親がかりの身だった。

 私も軽少ではない金額のお金を貸したが

結局回収はできなかった。

 かんべむさし氏の『むさし日曜笑図鑑』という本に

純文学作家志望の人を茶化した作品があって

その人はその作品を読んで純文学志望者をバカにしていたが

私は「そりゃ、あんたのことだろ」と思った。


 ネット上に仕事をするのでもなく

なにか作品を産むのでもなく

根拠もなく自信にあふれた人がいるが

これは『大いなる助走』の内容が現代化したものだろう。


 『大いなる助走』は徹底的に書き尽くした

日本文学史上に残る作品である。