SNOWLOGの日記

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小林信彦『四重奏 カルテット』を読む。小林信彦と常盤新平。

 

  そういえば今年の1月22日で

作家、翻訳家、雑誌編集者の常盤新平氏が

亡くなって10年経ったのだった。

 ということで

常盤新平氏といえば小林信彦氏である。

(ときめつけてはいけないのだが、都合上)

 小林信彦氏は「ヒッチコックマガジン」という雑誌の

編集を4年間ほどやっていたのだが、急にやめた(やめさせられた)のであった。

 その辞職については陰謀があって、その陰謀に

常盤新平氏がかかわっているのだと(小林信彦氏は)いう。

 はたしてこの説の真偽はどうか? 

常盤新平氏は陰謀などはなかったと釈明してるが、

小林信彦はあったと認識しているだろう。

 辞職の顛末については

フィクションではあるが、小林氏の『夢の砦』に記述がある。

 この作品はフィクションではあるが

編集者が会社を追われるところについては

真実をはめ込んであると小林氏は書いている。

 常盤新平氏は作中では「井田実」という名前で登場して、

いろいろあしざまに書かれている。

 小林氏の辞めさせられた恨みはそうとう深いのだろうなと思う。

そして他の作品にも、常盤新平らしき人物は登場する。

(ほんとうに恨みは深いのですね。)

単行本の『四重奏 カルテット』に収録されている短編小説「男たちの輪」にも

出てくる。


 『夢の砦』の登場人物とモデルの比定は

雑誌「黒猫」は、雑誌「宝石」

文化社 宝石社

雑誌「パズラー」 雑誌「ヒッチコック・マガジン」

前野辰夫 小林信彦

川合寅彦  小林信彦青島幸男

城戸草平 江戸川乱歩(+城昌幸

佐伯一誠 松本清張

津田 谷井正澄

井田実 常盤新平

金井 大坪直行

石黒 萩原津年武

とミステリファンなら知ってる名前が出てくる。

(この推定は私がしたものです。)
 
 小林信彦氏の「宝石社」追放事件は世間的には大事ではないが

昭和ミステリ雑誌史上の「事件」である。

真相は今もって謎である。

 関係者で生き残っているのは

小林氏、大坪直行氏、萩原津年武氏だけだろう。

 『四重奏 カルテット』の「男たちの輪」の常盤氏(細谷となっているが)の

書かれっぷりは強烈である。
 
常盤新平氏が亡くなったあとでも

小林氏は常盤氏を許していないのだろうと

思われる。